親子でいい仕事してるわね
「きっと、みんなに、喜ばれるわね」
「お父さんね、本当はすごく優しい人なの
病気でこんな風な言葉、口にするの、」
「あなたたちが来てくれて
お父さん本当に喜んでるわ」
「お父さんね、誰にも心開いてくれなくて、
すぐ怒って、みんなに迷惑かけてるけれど
あなたたちには安心してるんだわ」
「わたし、あなたたちが来てくれてる時間だけ
ゆっくりできたわ」
、、
「もうすぐお父さんの四十九日なの、
顔そりしてもらって
さっぱりしたかったの」
となりの部屋には
もう、お父さんの寝ていたベッドが片付けられていて、
代わりにお父さんの若い頃の、いい感じの笑顔の遺影と、
たくさんのお花たちと、
スイカと、
タバコと、お酒と、。
わたしの買ってきたお花と、
美咲ちゃんにお顔そりをされながらも
こっち向いて、いい顔してくれていたほんの一月半前のお
いつもベッドに寝たままのお父さんを娘、美咲ちゃんに支
お顔そりをして
「誰にも心開かなくて、大変なの」と言ってくれて
いながらも、
わたしたちに任せてくれていたお母さんも、
お父さんのあとに、
カットして、
ソファーで横になってもらって
お顔そりをして、。
思い出話は
お父さんの “憎まれっ子世にはばかる” ならぬ話たちと、
「あなたたち、たくさんのかた亡くなったりとか
見てきてるんでしょう、」
と言ってくれたお母さんの言葉に、、
『たしかに仕事柄、たくさんのかたをなくしましたが、
こんなふうに、情というか、
お花を買ってとか、
顔そりのときに見せてくれたお父さんの写真を撮っておく
こんなふうに額に入れてお母さんにあげるとか
あまりないんです』と、
わたしの言葉のあとに
『わたしは
はじめてなんです、、
お客様が亡くなること、。』と、娘、美咲ちゃんの言葉。
帰り道、
車の中で
『泣きそうになったけど、
泣いたら止まらなくなるのわかってるし、
仕事しなくちゃいけないからと思って
唇かんでたんだ、。
マスクしてて良かった』と娘の言葉。
ありがとう。いい仕事してくれた。本当に。
あしたからもまた
笑顔でがんばろうね。。